四十肩(五十肩)と生理食塩水~ただの水なのに?~
四十肩(五十肩)の治療法は様々ありますが、その中に生理食塩水を用いたものがあります。
生理食塩水というと聞こえはいいですが、要するに体に浸透しやすくしただけの「水」です。
では、四十肩(五十肩)に、生理食塩水がどういう効果をもたらすのか?
今回は、この生理食塩水を用いた治療について書いていこうと思います。
四十肩(五十肩)に生理食塩水はどうやって使う?
生理食塩水を用いた治療は、基本的に注射で行います。
そして、現在医療機関でおこなわれているものでは、大きく2つの種類があります。
一つは、関節が固まってしまったような慢性期の四十肩(五十肩)に対して行われるもの、もう一つは凝り固まった肩回りの筋肉を緩めるために行われるものです。
はじめに関節が固まってしまったような四十肩(五十肩)に対して生理食塩水を用いる場合ですが、これは厳密にいうと生理食塩水だけでは行いません。
生理食塩水と、少量の麻酔薬を混ぜて関節の中に打ち込むというものです。
四十肩(五十肩)の慢性期では、炎症が落ち着いて代わりに関節を包む袋が縮んでしまいます。
コラーゲンの様々なタイプのものが、長く続いた炎症の影響で密になってしまうのです。
この関節を包む袋を伸ばそうとしても、なかなか伸びるものではありません。
そこで、関節の中に水を入れて徐々に膨らましながら、外部より動かすことで縮んだものを伸ばそうという考えです。
さらに、この関節を包む袋と肩甲骨と肋骨の間にある潤滑油の袋が通じているので、そこの道も広げてあげる目的もあります。
もう一つは、最近メディアでも取り上げられることが多くなった「筋膜周り」への生理食塩水の注射です。
四十肩(五十肩)、というよりも、肩こり解消のための方法として取り上げられることが多いです。
個人的な意見としては、うまく使えば、四十肩(五十肩)に対しての方が効果が実感しやすいのではないかと思っています。
これは、本当に生理食塩水というただの水を注射するだけなのですが、打つ場所をきちんと定めることがポイントです。
そのために、超音波検査の機械(エコー)を用いて、筋膜が折り重なってしまっているところ、血流が滞り、筋膜が密になってしまっているところに注射を打ち、筋膜の塊をはぐというものです。
適切なところに用いれば肩こりも楽になり、四十肩(五十肩)でも肩の動きが出やすい環境を作ることができます。
このように、ただの生理食塩水であっても近年では四十肩(五十肩)に対して有効な治療が開発されています。
四十肩(五十肩)で気になる方は、まずは医療機関で相談してみてはいかがでしょうか?
生理食塩水による四十肩(五十肩)の治療~2つの方法の実際~
四十肩(五十肩)に対する生理食塩水を用いた治療には、代表的なものとして2つのものがあることは前述しました。
- 関節の中に直接生理食塩水(と麻酔薬)を打ち込んで膨らませるもの
- 凝り固まりゆがんだ筋膜付近に生理食塩水を打ち、筋膜をはがすもの
この2種類です。
前者は、joint distension(ジョイントディステンジョン)と呼ばれ、昔からあったものです。
四十肩(五十肩)で固まった関節の中に生理食塩水をいれ、水風船を膨らますようにしていくのです。
実際に行う場合は、生理食塩水に麻酔薬を混ぜ、普通の診察室で肩の中に注射を打ちます。
ゆっくりと生理食塩水を入れながら医師が肩の関節を動かしていきます。
腕を体の正面まで上げ、肘を90度に曲げます。
そうすると、手は顔の斜め上くらいに来ると思います。
そこから顔の前、おへそに向かって腕は降ろさずに手を下げていきます。
すると、内側にねじるような動きになるので、それを繰り返すわけです。
麻酔薬が入っているとはいえ、かなり強引な手法です。
しかし、そこまでやらないとなかなか四十肩(五十肩)で固まってしまった肩は動かないのが特徴です。
後者の「筋膜周り」に生理食塩水を打ち込む手法についてもご説明します。
先ほども書いたように超音波(エコー)をもちいて筋膜が折り重なったり、分厚くなったりしているところを探して生理食塩水を打ち込みます。
患者は、ただゆったり寝ているだけで十分です。
一か所ではなく、何か所も筋膜の動きが滞っていることもあり、ある程度複数の場所に行ってみることや、打った後の状態を見ながら打つ場所を変えていくことが主流です。
このように、ただの水である生理食塩水でも、うまく使うことで害のないとても良い治療になりえるのです。
まずは興味があればいちど医療機関などに相談してみてはいかがでしょうか?